Oreti river(オレッティリバー)
オレッティは・・・刺激が強い

   

 
             オレッティの谷はどことなく寂しい


オレッティリバーはテアナウの町から車で一時間ほどの場所にあり、
ダムも湖もない海まで一直線の川。
知る人ぞ知るビックブラウントラウトの川。
日本の雑誌でも紹介されている。
それには川の説明に付け足して、釣り人が多いせいで魚の警戒心も強い、
ということも強調して書かれてあった。
「一日釣りをして、一尾釣れればラッキーだ」とも書いてあった。

98年の2月はじめてニュージランドの訪れたときに、この川に挑戦した。
結果は惨澹たるもので、
一尾釣れるどころか魚にフライを投げることすら許してもらえず、
目の前を逃げて行く大きな魚を、指をくわえて見ているだけだった。
「技術を磨いて、出直して来ます」と,
頭をさげて逃げるように川を去ったのを覚えている。
そして5度目のニュージランド、
01年12月24日再びオレッティの岸辺に立った。
魚を見つける目、魚へのアプローチ、自信はあった。気合十分で望んだ。

オレッティリバー周辺は、谷が広く開けていて、
雨が少なく、見渡す限りでは高い木はなく、乾いた植物が谷に広がるといった、
典型的なタソックの中をゆったりと川が流れている。
人気のない果てしなく広がる荒野に、途方にくれ、
どことなく寂しささえ感じさせる世界が広がっていた。

橋の横に車を止め、一時間ほど歩いて、
Ashton burnという支流から釣り上がることにした。
「魚は大きい」、そして「釣り人を知っている」。
頭の中ではその言葉が繰り返され、
川を歩く足取りは、1歩1歩油断できない。集中力が試された。
自分の経験や技術が向上したせいか、
たまたま魚がいい場所にいてくれてるせいか、
曇り空の下、水中で揺れる怪しい影が、次から次に目に入ってきた。
魚を見つけ、静かに近づく。そして気づかれないようにフライを投げる。
チャンスは何度もある。それなのに魚がフライに反応してくれない。
三度もフライを投げれば、魚は逃げていってしまう。
何が悪いのか?
ため息が積もり積もって、落ち込んでゆく自分。
3時間も同じことが繰り返されれば、最初の自信はどこへやら、
「今年もだめか」と、「あきらめ」の文字が浮かんでくる。
「そんなことは無い!」と否定するものの、
もはやその気力さえも時間の問題だった。
甘い考えで、釣り竿片手に川にはいってみたものの、
私をもて遊ぶかのような巨大なブラウントラウトと、広すぎる荒野に、
見る見るうちにちっぽけな自分が出来上がってしまった。

すべてがあきらめ気味のムードの中、
岸際の浅い瀬の中で魚の影が目に入ってきた。
流れの中で揺れる影は確かに何かを食べている、いいサイズの魚だった。
期待せずも2cmほどのセミフライを流してみるが、相変わらず反応はない。
それではと、セミフライの下にニンフをぶら下げて、流してみると、
大きな口が水面から現れ、セミフライをガッポリとのみこんでしまった。

   
          魚に引っ張られて川を下る       


突然の転機に動揺が先走り、右手から全身に伝わるパワーに気づいたときには、
魚は下流の瀬へと突進ししていた。
100mを一気に下り終えた魚は、さすがに疲れたようで、
それに引きずられるかのように、河原を走った私も息を切らしていた。
まさに執念の一尾といえるその魚は66cm、7lbのブラウントラウトだった。




その後広兄が50cm、私が55cmのブラウントラウトを釣り上げ、
極めつけの魚が広兄の竿にヒットした。
対岸のバンク際で一度ライズを見せた魚前年の恨みを、目ざとく見つけた広兄。
8番のセミフライを投げ込んでみると、
「バコン!」という爆発とともに、フライが消えた。
2,3度ジャンプを見せたその魚は、
70cm8lbの完璧なブラウントラウトだった。


一度ライズした魚は70cm 3.8kgだった


70、66cmとすばらしい魚を手にしたものの、
この川を釣っていると、
そのサイズの魚がまれに見るサイズではないことがわかる。
それだけ逃げてゆく魚はどれもこれも大きく、
その中の一尾が、私のフライに食いついてくれただけに過ぎなかった。
中にはそれよりも大きな魚も、ゆっくりと泳ぎ去っていった。
そんな川がオレッティで、まだまだ自分の技術の無さを感じさせる川だった。
私の心ををあざ笑うかのように、乾いた風がオレッティの谷を吹き抜けた。

01年12月26日Hollyfordより

 
        広い荒野なのかで魚と釣り人は1対1で時を忘れる




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